二、三本立っているかげに……ツツツン、ツン、ツン、こころ静かに調子を合わせる三味の音。
やにわにそこへとびこんだ与吉、ペタンとすわって、
「オ! 姐御《あねご》! これあまア、おめずらしいところで。イヨウ! 死んだと思ったお藤さんとは、ヘヘヘ、丹下の旦那でも気がつくめえッてネ」
三
鳥追い姿のような、旅を流しの三味線ひき――。
笠の紅緒が、白い頬にくっきり喰い入って、手甲、脚絆――その脚絆の足を草に投げだした櫛巻お藤は、どこやら、風雨と生活にもまれ疲れて、とろんとよどんだ眼をあげて与吉を見ました。
と。
その顔はすぐ、いきいきとかがやいて、いたずらっぽく小首をひねったものです。
「ハテネ、たいそう慣れなれしくおっしゃるが、おまえさんは……どちらの?――」
立っていては藪《やぶ》畳の上に、腰から上だけのぞいて、儀作にみつかるおそれがあるので、与吉は壺を足にはさみこむように、ものものしくしゃがみながら、
「ナニ? 何? 姐御はおいらをお見忘れなすったというんですかい。情けねえ、ヘッ、情けねえや」
わざとらしく眼をこするのは、涙をふくしぐさのつもりで、
「十年
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