いずくんぞ知らん、動かないのではない、動けないので。
ハッとすると、脳の働きがしびれてしまって、口がカラカラにかわき、とたんに舌がまきこむ。まず何を持ち出そうかなどと考えながら、頭のなかはそれこそ火のついた車のよう。これがわきから見ますと、非常に落ちついたように見えることがある。こういう人にかぎって、手提げ金庫とまちがえて煙草盆をだいてかけ出したり、書類入れのつもりで猫をさかさにつかんでとびだしたりなどという話は、よくあります。
こう考えてみると、歴史上の人物なども、実質の何倍か、ずいぶん得をしている人もあり、また一面には、とんでもない損をしている人もあるんじゃないかと思う。
余談にわたりました。
が、このときの若党儀作が、ちょうどそれで、
「ああ、アア、あの……!」
とわめきながら、泰然と突っ立ったままだ。
ところが、与の公も与の公だ。追ってもこないのに、もう、かかとに跫音が迫るような気がして、ひとりであわてて、
「うわあっ!」
さけぶと同時に、右手の雑木林へかけこんだのです。夢中でした。
壺をひっかかえて、ガサガサと灌木を分けてつきすすんでゆくと! 大きな栗の木が
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