って」
 源三郎は迷惑顔、
「だが、何もおれが、萩乃さんをつれて来てくれと頼んだわけじゃアなし――」
「コレ、源三! てめえ何を言う。おれはおめえのためにしたんじゃアねえのだ。萩乃さんの心を察して、この出しゃばりな役をつとめたのだよ。こんなにおめえ一人を思っている萩乃さんの心中を、すこしでも考えたら、こら、源三、そんな口はきけめえが」
 起ちあがった左膳は、濡れ燕の鞘尻で帯をさぐりながら、ぐっと落し差し……一本きりの左の手を、懐《ふところ》ふかくのんで、ブラリと歩きだしながら、
「源三、こんなに女の子に思われるのは、あだやおろそかなことじゃアねえぞ……」
 そういう左膳の声は、かすかにふるえて、
 源三郎はいつしか、キチンと床の上にすわりなおしていた。
「しかし、弱ったなあ。今ここへ萩乃を置き去りにされても……マア、左膳、頼むから、もうすこしおれといっしょにいてくれ」
「いたくても、萩乃さんの邪魔になる。このひとがどんなにおめえを恋いしたっているか――それを思ったら源三、な、すこしもはやくからだを丈夫にして、首尾よくあの道場を乗っ取れよ。なア、そのときあこの丹下左膳、大手を振って遊びに
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