のに、これはいったいどうしたのだ。ヤケに重いぞ、この鎧櫃は」
 山口達馬に青砥伊織《あおといおり》という、名前だけは一人前《いちにんまえ》の若い門弟が二人軽いつもりで持ち上げようとしたその鎧櫃が、めっぽう重いので、ビックリ顔を見あわし、ポカンと立っておりますと……。
 青木三左衛門という、この方はすこし年をとっております。横鬢《よこびん》のところが、こう禿げあがっていて、分別顔。
「ナニ、そんなに重いはずがあるものか。具足がはいっておるかもしれんから、ことによると多少は重いであろうが――さア、手を貸そう」
「ウム」
 と、三人のかけ声で、やっと鎧櫃を持ち上げてみると、なるほど重い。
 だが、鎧やら何やらはいっているだろうと、青木三左衛門、山口達馬、青砥伊織の三人、べつにそうふしぎにも思わず、小倉の袴をバサバサ言わせて、式場なる道場までかついでまいって、正面に置きました。

       四

 サア、何十畳敷けるでしょう……。
 広い板の間の道場。
 正面には、故司馬先生の筆になる十方不知火の大額をかかげ、その下の、一段小高い畳の壇上、老先生、老先生ありし日には、あの白髪|赭顔《しゃが
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