しかし、なんだな、峰先生は、やっと本願を達したというものだな。え、馬鹿を見たのはあの伊賀の暴れん坊だよ。婿の約束はぐれはま[#「ぐれはま」に傍点]になる。こけ猿の茶壺は盗まれる、故先生のとむらいの席へのりこんで、りっぱに見得をきったまではいいが……」
「そうだテ、あとがよくねえ。本人だけは、あくまで萩乃様の良人のつもりでいても、内祝言《ないしゅうげん》はおろか、朝夕ろくに顔を見たこともない。おまけに、ああやって家来を連れて、無茶ながんばりをやっておるうちに峰先生のペテンにかかって、火事にまぎれておとし穴とは、よくよく運の悪いやつだな」
「しかし、それがしは萩乃さまがお気の毒でならぬよ。毎日毎日ああ泣いてばかりおられては、今に黒眼が流れてしまいはせぬかと――」
「まったくだテ。あの悲しみに沈んでおられた萩乃様を、どうで今夜の席へ引っぱり出すのかと思うと、おいたわしくてならぬ」
「サアサ、むだ口はあとにして、はよう席をととのえねばならぬ。峰先生がお待ちかねだ。よいか、そっちの端を持ったか、山口」
「ウム、サアゆこう……オヤ、これはどうした!」
「ヤ! おどろいたな、どうも……からだと思った
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