ころだった。
 たびたびのことで懲《こ》りているから、それをけっしてほん物のこけ猿だとは思わないが。
 なにしろマア、ここでひさしぶりに茶壺らしい物を拝むとは、幸先《さいさき》がいい。おおぜいの人数で、大さわぎしてまもって行く壺こそ、贋物かもしれねえが、こうやって若党一人が、何気なく見せかけて、ヒョイと肩へかついでゆく壺……こいつはおおいに怪しいぞ。
 芝居気のあるやつで、道の真ん中に立ち止まり、左の袖口へ右手を入れて、沈思黙考の体よろしく、与の公、首をひねったものだ。
 それから。
 腰の手拭をバラリと抜いて、スットコかぶり、あんまり相のよくない風態です。
 すたすたと足を早めたまではいいが、先方の若党も、おっそろしく足がきく。
 はじめ、与吉の考えでは。
 柳生藩の急使という以上、すくなくとも五人や十人の供を連れて宿継ぎの駕籠かなにかで、ホイ! 駕籠! ホイ! とばかり、五十三次を飛ばして行くに相違ない。
 自分はひとまずさきに街道へ出て、どこかの立場茶屋にでも腰をかけ、眼を光らせていれば、金輪際にがしっこはないのだ。見つけしだい、あとをつければいいと、そう思って、柳生の使いより先
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