いば》をあわせた左膳と源三郎……今後長く、果たして敵となるか、味方となるか――。
「では、この勝負、一時お預けとするか」
「さよう、いずれ後日に……」
ほほえみかわした二人は、サッと背中を合わせて、包囲する司馬道場の若侍たちへ、怒声を投げた。
「こいつらア、金物の味を肉体《からだ》に知りてえやつは前へ出ろっ!」
と左膳、ふりかぶった左腕の袖口に、おんな物《もの》のはでな長じゅばんを、チラチラさせて。
源三郎は、丹波の大刀を平青眼、あおい長い顔に、いたずらげな眼を笑わせて、
「命不知火《いのちしらぬい》、と申す流儀かの」
与吉は、丹波について部屋へ行ったとみえて、そこらに見えなかった。源三郎が植木屋すがたに身をやつして、入りこんでいたことは、与吉は丹波に口止めされたので、一同にいってない。植木屋にしては、武士めいた横柄《おうへい》な口をきくやつ……皆は、そう思いながら、
「これはおもしろいことになったぞ」
「真剣は、今夜がはじめてで――」
「拙者が、まず一刀を……」
自分らの腕が低いから、相手のえらさ、強さがわからない。
白林いっせいに騒いで、斬り込んできた。
「殺生《せっし
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