どこの時、坂下から群衆を蹴散らしてあがってくる、※[#「口+戛」、第3水準1−15−17]々《かつかつ》たる騎馬の音……!
二
それも、一頭や二頭じゃない。
十五、六頭……どこで揃えたか、伊賀の暴れン坊の一行、騎馬で乗りこんで来た。
源三郎の白馬を先頭に、安積玄心斎、谷大八、脇本門之丞、その他、おもだった連中が馬で、あとの者は徒歩《かち》です。
ものすごいお婿さまの一行――大蛇のように群衆の中をうねって、妻恋坂の下から、押しあげてきました。
「寄れっ! 寄れっ!」
と、玄心斎の汗ばんだ叱咤が、騒然たる人声をつんざいて聞こえる。
「お馬さきをあけろっ!」
「ええイッ、道をあけぬかっ」
「ひづめにかけて通るぞ」
口々に叫んで、馬を進めようとしても、何しろ、通りいっぱいの人だから、馬はまるで人間の泥濘《ぬかるみ》へ嵌《は》まりこんだようなもので、馬腹《はら》を蹴ろうが、鞭をくれようが、いっかなはかどりません。
わがまま者の源三郎、火のごとくいらだって、
「こここれ! 途《みち》をひらけっ。けけ、蹴散らすぞっ……」
鏡のような、静かな顔に、蒼白い笑みをうかべた
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