、銭包みを山盛りにしたお三宝をさしあげる。
丹波はそれを受け取っては、眼下の人の海をめがけて、自分の金じゃアないから、ばかに威勢がいい。つかんでは投げ、掴んでは投げ……。
ワーッ! ワッと、大浪の崩れるように、人々は鬨《とき》の声をあげて、拾いはじめた。
拾うというより、あたまの上へ来たやつを、人より先に跳びあがり、伸びあがって、ひっ掴むんです。こうなると、背高童子が一番割りがいい。
押しあい、へし合い、肩を揉み足を踏んづけあって、執念我欲の図……。
「痛えっ! 髷《まげ》をひっぱるのあ誰だっ!」
「おいっ、襟首へ手を突っこむやつがあるか」
「何いってやんでえ。我慢しろい。てめえの背中へお捻りがすべりこんだんだ」
「おれの背中へとびこんだら、おれのもんだ。やいっ、ぬすっと!」
「盗人だ? 畜――!」
畜生っ! とどなるつもりで、口をあけた拍子に、その口の中へうまく不知火銭が舞いこんで、奴《やっこ》さん、眼を白黒しながら、
「ありがてえ! 苦しい……」
どっちだかわからない。死ぬようなさわぎです。
どこへ落ちるか不知火銭。
誰に当たるか不知火小町のお墨つき――。
見わた
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