らしい盥《たらい》を置いて、萩乃やお蓮さまや、代稽古峰丹波の手で、老先生の遺骸に湯灌を使わせて納棺《のうかん》してある。
 在りし日と姿かわった司馬先生は、経かたびら、頭巾、さらし木綿の手甲《てっこう》脚絆をまとい、六文銭を入れたふくろを首に、珠数を手に、樒《しきみ》の葉に埋まっている。四方流れの屋根をかぶせた坐棺の上には、紙製の供命鳥《くめいちょう》を飾り、棺の周囲に金襴の幕をめぐらしてあるのだった。
 仏式七分に神式三分、神仏まぜこぜの様式……。
 玄関の横手に受付ができて、高弟のひとりが、帳面をまえに控えている。すべて喪中に使う帳簿は紙を縦にふたつ折りにして、その口のほうを上に向けてとじ、帳の綴り糸も、結び切りにするのが、古来の法で、普通とは逆に、奥から書きはじめて初めにかえるのである。
 大名、旗下、名ある剣客等の弔問、ひきもきらず、そのたびに群衆がざわめいて、道をひらく。土下座する。えらい騒ぎだ。
 萩乃は、奥の一間に、ひとり静かに悲しみに服しているものとみえる。お蓮さまも、表面だけは殊勝げに、しきりに居間で珠数をつまぐりながら、葬服の着つけでもしているのであろう。ふたりとも
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