の刀を取って防いでくれた。ところが、剣光と血に逆上したとみえて、その感心な植木屋が、あとでは左腕の怪剣士といっしょになって、道場の連中と渡りあったとだけ……そうおもて向き披露してあるのだ。
 だから、あの、星が流れて、司馬老先生が永遠に瞑目《めいもく》した夜、かわいそうな植木屋がひとり、乱心して屋敷を逐電した……ということになっているので。
 が、しかし。
 あれが音に聞く柳生源三郎か、あのものすごい腕前!――と自分だけは知っている峰丹波の怖れと、苦しみは、絶大なものであった。
 道場を横領するには、お蓮様と組んで、あれを向うにまわさねばならぬ。つぎは、どうやってあらわれてくるであろうかと、丹波、やすきこころもない。
 それから、源三郎のもう一つの疑問は、あの枯れ松のような片腕のつかい手は、そもそも何ものであろうか?……ということ。
 自分が一|目《もく》も二目もおかねばならぬ達人が、この世に存在するということを、源三郎、はじめて知ったのです。
 峰丹波には、この剣腕を充分に見せて、おどかすだけおどかしてある。もう、正々堂々と乗り込むに限る! と源三郎、
「供ッ!」
 と叫んで、本陣の
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