に」
「埋没の個処を詳細紙面にしるし、これをこけ[#「こけ」に傍点]猿の壺中に封じあるものなり」
[#ここで字下げ終わり]
 そのこけ猿の茶壺は、弟源三郎に持たせて、江戸へやってしまった!
 対馬守は、大いにあわてて、紙を掴みとるなり、大書しました。
[#ここから2字下げ]
「うずめある場所は、宗匠御存じなきや」
「何人もこれを知らず。その地図は、こけ猿の茶壺に封じ込めあるをもって、茶壺をひらけ」[#この行は底本では天付き]
[#ここで字下げ終わり]
 長い筆談に疲れたものか、宗匠はカラリと筆を投じて、不機嫌に横を向いてしまった。

       六

 大金をうずめてある個処を示した秘密の地図が、こけ猿の茶壺に封じてある――なんてことは、だれも知らないから、彼壺《あれ》はもうとうのむかしに、司馬道場に婿入りする源三郎の引出ものとして、江戸へ持たしてやってしまった!
 あとの祭り……。
 その黄金さえ掘り出せば、日光御修繕なんか毎年引き受けたってお茶の子サイサイ、柳生の里は貧乏どころか西国一はもちろん、ことによると海内《かいだい》無双の富裕な家になるやも知れない――。
「しまったっ」

前へ 次へ
全542ページ中119ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング