筆が書きました。
五
こけ猿の茶壺にきけ――対馬守が、口のなかでつぶやいて、小首を傾けるのを、じっと見つめていた一風宗匠は、やがて筆をとって懐紙《かいし》に、左の意味のことをサラサラと書き流したのです。
それによると……。
剣道によって家をなした柳生家第一代の先祖が、死の近いことを知ると同時に、戦国の余燼《よじん》いまだ納まらない当時のこととて、不時の軍用金にもと貯えておいた黄金をはじめ、たびたびの拝領物、めぼしい家財道具などをすべて金に換えて、それをそっくり山間の某地に埋めたというのである。
「山間の某地にナ」
と対馬守は、眼をきらめかして、
「夢のごとき昔語りじゃ」
と、きっと部屋の一隅をにらんだ。
すると、殿の半信半疑の顔を見た一風宗匠は、また筆をうごかして、
[#ここから2字下げ]
「在りと観ずれば在り。無しと信ずれば無し。疑うはすなわち失うことなり」[#この行は底本では3字下げ]
[#ここで字下げ終わり]
「ふうむ……」
腕こまぬいた対馬守のようすに、家来たちも、もうふざけるものはない。みんな円座から乗りだして、肩を四角くしている。
対馬守は
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