直せばいいなどとナ、うははははは、殿! かような危急な場合、たあいもない老人を相手に、いたずらに時を過ごさるるとは、その意を得ませぬ。早々御下山あってしかるべく存じまする」
「そうだ、そうだ、一風宗匠はおひとりで、夢の国にあそばせておくに限るて」
 まるで博物館あつかい――耳が聞こえないから、宗匠、何を言われても平気です。
 対馬守も、暗然として宗匠を見下ろしていたが、ややあって長嘆息。
「ああ、やはり年齢《とし》じゃ。シッカリしておられるようでも、もう耄碌《もうろく》しておらるる。詮ないことじゃ。ごめん」
 一礼して土間へおりようとすると対馬守の裾を、ガッシとおさえたのは一風宗匠だ。
 動かぬ舌をもどかしげに、恨むがごとく殿様を見上げておりましたが、すぐまた、筆に墨をなすって、
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「かかる時の用にもと、当家御初代さまの隠しおきたる金子《きんす》、幾百万両とも知れず。埋めある場処は――」
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 眼をきらめかせた対馬守、じっと宗匠の筆のさきを見つめていると、
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「――こけ猿の壺にきけ」
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 と一風の
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