宗匠、筆をカラリと捨てて、ニコニコしている。
 対馬守はせきこんで、その筆を拾い上げ、
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「宗匠、遺憾ながら事態を解せず。剣力、膂力《りょりょく》をもって処せんには、あに怖れんや。ただ金力なきをいかんせん」
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 一風宗匠は依然として、植物性の静かな微笑をふくみ、
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「風には木立ち、雨には傘、物それぞれに防ぎの手あるものぞかし、金の入用には金さえあらば、吹く雨風も柳に風、蛙のつらに雨じゃぞよ」
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 さあ、対馬守わからない。

       四

「宗匠、何を言わるる。そ、その金がないから、予をはじめ家臣一同、この心配ではござらぬか」
 思わず対馬守は、口に出してどなったが、いかな大声でも、一風宗匠には通じないので。
 唖然《あぜん》たる対馬守の顔へ、宗匠は相変わらず、百年を閲《けみ》した静かな笑みを送りながら、また筆をとって、
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「金は何ほどにてもある故に、さわぐまいぞえ。剣は腹なり。人の世に生くるすべての道なり。いたずらに立ち騒ぐは武将の名折れと知るべし」
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