った八代吉宗公のおことばに対して。
 千代田の垢すり旗下、愚楽老人《ぐらくろうじん》の言上したところでは――ナアニ、先祖がしこたまためこんで、どこかに隠してあるんです、という。
 果たしてそれが事実なら……。
 当主対馬守がその金の所在《ありか》を知らぬというはずはなさそうなものだが。
 貧乏で、たださえやりくり算段に日を送っている小藩へ、百万石の雄藩でさえ恐慌をきたす日光おつくろいの番が落ちたのだから、藩中上下こぞって周章狼狽。
 刃光刀影にビクともしない柳生の殿様、まっ蒼になって、いまこの裏庭つづきの帝釈山へあがってきたわけ。
 その帝釈山の拝領の茶室、無二庵《むにあん》に隠遁する一風宗匠は、齢《よわ》い百二十いくつ、じっさい奇蹟の長命で、柳生藩のことなら先々代のころから、なんでもかんでも心得ているという口をきく百科全書です。
 いや、口はきけないんだ。耳も遠い。ただ、お魚のようなどんよりした眼だけは、それでもまだ相当に見えるので、この一風宗匠との話は、すべて筆談でございます。
 木の根が化石したように、すっかり縮まってしまってる一風宗匠、人間もこう甲羅《こうら》をへると、まことに
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