するであろう! 生き血の河も流れるだろう。
剣の林は立ち、乱闘の野はひらく。
そして! その屍山《しざん》血河《けっか》をへだてて、宿業《しゅくごう》につながる二つの刀が、慕いあってすすり泣く……!
非常を報ずる鉄斎道場の警板があけぼのの里の寂寞《しじま》を破って、トウ! トトトトウッ! と鳴りひびいた。
変異を聞いて縁に立ちいでた鉄斎、サッと顔色をかえて下知《げじ》をくだす。
もう門を出たろう!
いや、まだ塀内にひそんでいるに相違ない。
とあって、森徹馬を頭に、二隊はただちに屋敷を出て、根津の田圃に提灯の火が蛍のように飛んだ。
同時に、バタン! バタン! と表裏の両門を打つ一方、庭の捜査は鉄斎自身が采配をふるって、木の根、草の根を分ける抜刀に、焚火の反映が閃々《せんせん》として明滅する。
ひとりそのむれを離れた諏訪《すわ》栄三郎、腰の武蔵太郎安国《むさしたろうやすくに》に大反りを打たせて、星屑をうかべた池のほとりにたった。
夜露が足をぬらす。
栄三郎は裾を引き上げて草を踏んだ。と、なんだろう――歩《あし》にまつわりつくものがある。
拾ってみると、緋縮緬の扱帯《
前へ
次へ
全758ページ中17ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング