竜二刀を確《しか》と抱きしめて子恋の森を走り出た弥生、ゆくてを見ると、四つの駕籠がおりているので、さては得印門下の四人が、何かの用で森の家へ帰って来たのか、やれ助かった! と[#「助かった! と」は底本では「助かった!と」]なおも足を早めて近づくと、
「おうい! そこへ行ったぞウッ!」
といううしろからの左膳の声に応じて、バラバラバラッと駕籠を出たのを眺めると、
一難去って二難三難!
月輪の援隊《えんたい》、三十一人が三人に減ったその残剣一同、首領月輪軍之助、各務房之丞、山東平七郎……これが左膳とともに駕籠を駆って来ていた。その網のまん中へ、われから飛びこんだ小魚のような弥生の立場!
「あれイ……ッ!」
と、もう本然の女にかえっている弥生、一声たまぎるより早く、ただちに元来た方へとって返そうとしたが!
ことわざにもいう前門の虎、後門の狼! あとは左膳がおさえてくるのだ。
右せんか左すべきかと立ち迷ううちに四人のために、手取りにされた弥生、夜泣きの二剣とともに駕籠のひとつにほうりこまれるや否や、同じくそれへ左膳が割りこもうとした。
その一刻に!
これもゆうべ。
多勢に無勢、風雨中の乱戦に、得印五人組のために坤竜丸を奪い去られた栄三郎と泰軒、おくればせながら左膳の一行をつけて駈けてきた。
そして!
諏訪栄三郎、そのさまを見るより、昨夜来、血に飽いている武蔵太郎を打《ちょう》ッ! とひるがえして、左膳へ斬りこむ。
「来たなッ!」
大喝した左膳、栄三郎、泰軒の中間へわざと体を入れながら、
「月輪|氏《うじ》、かまわず先へやってくれッ! 落ちあう場所はかねての手はずどおり……あとは拙者が引きうけたから、娘と刀をシカとお預け申したぞ……! サ拙者を残して、一ッ飛ばしにやってくれいッ……」
わめき立てた。
同時に。
「ハイッ! いくぜ相棒!」
「合点《がってん》だッ!」
と駕籠屋の威勢。
「しからば丹下殿、あとを――」
「心得申した、一時も早く!」
駕籠の内外、左膳と軍之助が言葉を投げあったかと思うと、四つの駕籠がツウと地をういて――。
二、三歩、足がそろいだすや、腰をすえて肩の振りも一様に、雨後のぬかるみに飛沫《ひまつ》をあげて、たちまち道のはずれに見えずなった。
チラと見送って安心した左膳、皮肉な笑いを顔いっぱいにただよわせて、泰軒、栄三郎
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