締《し》め隠したのである。
名匠の熱執《ねっしゅう》をひとつにこめた水火秘文状。
離るべからざるを二つに断った水秘と火密。
水は低きに就《つ》き、火は高きに昇る。
ゆえに。
水は竜、火は雲である。
それかあらぬか。
関の孫六水火の合符《がっぷ》、乾雲《けんうん》丸は大沸かし小沸かしの火策をのみ、わきざし坤竜《こんりゅう》はやいば渡しの水術を宿して、雲竜二剣、ここにいよいよ別れることのできない宿業の鉄鎖《てっさ》をもってつながれる運命とはなったのだった。
一あって用をなさず、二|合《がっ》してはじめて一秘符となる古文書を、中央からやぶいて二片|一番《つがい》としたさえあるに、しかも、その両片の一字一語に老工|瀕死《ひんし》の血滴が通い、全文をひとつに貫いて至芸《しげい》労苦《ろうく》の結晶が脈々として生きて流れているのである。
たださえ!
同装一腰、雲と竜に分かれて離れられない乾雲坤竜だ。
それがこの、死に臨む刀霊《とうれい》の手に成った水火の秘文合符をそれぞれに蔵しているとは!
むべなるかな!
乾坤……天地のあらんかぎり、火の乾雲丸、水の坤竜丸、雲は竜を呼び、竜は雲を望んで、相慕い互いにひきあうさだめにおかれているのだった。
ふたたび思い起こす刀縁伝奇《とうえんでんき》。
二つの刀が同じ場所におさまっているあいだは無事だが、一朝乾坤二刀、そのところを異にするが早いか、たちまち雲竜|双巴《ふたつどもえ》、相応じ対動して、血は流れ肉は飛び、波瀾《はらん》万丈、おそろしい現世の地獄、つるぎの渦を捲き起こさずにはおかないという。
それが事実であることは、誰よりも弥生が、眼のあたりに見て知悉《ちしつ》しているのだったが、この夜泣きの刀のいわれには、単に雲竜相引の因果のほかに、底にじつに、こうして秘文|合符《がっぷ》の故実がひそんでいたのである。
わかれていて二刃、同じ深夜に相手を求めてシクシクと哭《な》き出すというが、それは、割文《わりふみ》となって仲を裂かれている水火の秘文が、各自その柄のなかから悲声をしぼるのかも知れなかった。
死のまぎわまで鍛刀の思いを断たない関の孫六の血肉が働いているのだ。あり得ないことと誰がいい得よう!
こうして――。
乾雲坤竜の大小、おのおのその柄の底に水火|文状《もんじょう》の合符《がっぷ》を秘めたまま、
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