々までなかなかに凝《こ》った住居《すまい》ではあるが、ながらく無人、狐狸《こり》の荒らすにまかせてあったうえに、いまの住人というのがまた得体《えたい》の知れない男ばかりの寄合い世帯なので、片づけや手入れをするものもなく、荒廃乱雑をきわめているぐあい、さながらこれも化物屋敷といいたいくらい……。
 この、安達《あだち》ヶ|原《はら》ならぬ一つ家の土間に、似合しからぬ五梃の駕籠がきちんと、並べておろしてあるのだった。
 そして。
 その上の壁に、五人分の火事装束がズラリと釘にかかっている――かの五人組火消し装束の不思議な住居。
 首領――とよりは、むしろ長老と呼びたい白髪の翁のもとに。
 四肢のごとく動く屈強な武士が四名。
 ふだんは掃除水仕事や家の警備に当たり、一朝出動の際はただちに駕籠舁《かごかき》と早変りする、六尺近い、筋骨隆々たる下男が十人。
 それに。
 中途から一団に加わった小野塚伊織の弥生と、そのまた弥生が稀腕《きわん》を見こんで招じ入れた手裏至妙剣《しゅりしみょうけん》の小魔甲州無宿|山椒《さんしょう》の豆太郎と、〆めて十七人の大家内に、森かげの隠れ家には、それでも賑やかな朝夕がつづいているのだった。
 丹下左膳と、諏訪栄三郎の中間にあって等しく両者をねらい、左膳から乾雲を、栄三郎から坤竜を奪って雲竜二刀をひとつにせんとしている謎の一群!
 頭《かしら》立つ老人は小野塚鉄斎の化身とでもいうのであろうか? 弥生までが黒髪を断ち切ってこの五人組に加担し、あまつさえ豆太郎などという変り種までとりこんで戦備をととのえ、じっさい着々活躍しつつあるとは、たとえ弥生の伊織と五人組とのあいだに、どんな了解《わけあい》がついているにせよ、それは、老翁はじめ五人組の正体同様、なんとも外からは想像をゆるさない秘情であった。
 白髪童顔の老人は、そも何者か?
 それに仕うる血気の四士?
 また、彼らと行動をともにする男装の弥生の心中は? 栄三郎への彼女の悲慕哀恋《ひぼあいれん》はいったいどうしたというのだろう?
 これらすべてが、火事装束に包まれる青白いほのお、やがては燃え抜いてあらわれんとする密事の火種であらねばならない。
 この、去来突風のごとく把握すべからざる火事装束五人組と弥生豆太郎の住家のうえに、今や武蔵野の落日が血のいろを投げて、はるかの雑木ばやしに※[#「口+伊」
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