《みち》のむこうに、細長い影を斜めに倒して、泰軒と栄三郎の並んでゆくのが、小さく、だがハッキリと見える。
そのうしろ姿から眼を離さず小野塚伊織の弥生、同伴の豆太郎を顧みて答えるのだった。
「うむ! 殺すはもとより、どちらにも怪我があってはならぬ。そちのその手裏剣をもって、ほどよくおどかしてくれればよいのじゃ」
豆太郎は、グルリと帯のあいだにさしつらねた十幾つの短剣をなでながら、にやりと笑った。月光がその顔にゆがむ。
「むずかしい御注文ですね。いっそひと思いにやっちまえというんなら骨は折れませんが、傷をつけねえようにおどかせなんて、こいつア少々……」
「そこが豆太郎の手腕ではないか」
いいながらも弥生は、前をゆく二人をみつめているので、そばの豆太郎が、これはいささか曰《いわ》くがありそうだわい! というように狡《こす》そうに首をかしげたのに気がつかなかった。
米沢町《よねざわちょう》から薬研堀《やげんぼり》へと、先なる両人は肩を並べて歩いてゆく。
月しろと夜露。
あとの、豆太郎と弥生のふたりも、戸をおろした町家の軒下づたいに、見えがくれにつけていくのだが、深夜の無人にすっかり安堵してか、泰軒も栄三郎も一度も振り返らないで、忍びとはいえ、半ば公然なのんきな尾行。
もう四つ半をまわったろう。中央に冴え返る月が、こころもち東へ傾いて、遠街を流す按摩の笛が細く尾を引いて消える。
脚が短いので、ともすれば遅れがちの豆太郎、ベタベタと草履を鳴らして弥生の横へ出た。
「どこイ行くんでげしょう、あいつら?」
「まあ――どうも方角が辰巳《たつみ》だな」
「たつみ? フウッ、乙ですね」
「そうかナ。方角が辰巳だと乙ということになるかな」
「しらばくれちゃアいけませんぜ。失礼ながら殿様なんざア男でせえふるいつきてえぐらいいいごようすだ。ねえ、女の子がうっちゃっちゃアおかねえや。さだめし罪なおはなしがたくさんごわしょう。だんまりで夜道を徒歩《ひろ》うてえなア気がきかねえ。一つ、色|懺悔《ざんげ》をなさいまし、色懺悔を……豆太郎、謹んでお聞きしますよ、エヘヘヘヘ」
「たわけ! 黙って歩け!」
「へ? するてえとなんですかい、それほどの男ぶりでまだ女を――てエのは、ハテ! 変だな!」
「ナ、何がへんだ?」
弥生の声には、早くも警戒の気が動いている。豆太郎は笑いほごした。
「いえ
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