らす半鐘の音が風に乗って聞こえていた――。
あの焦土の中心にあっては、いかな泰軒先生もついに一握の灰と化したろう……という想定はもってのほか!
ちょうど月輪の連中が途上に休んでいるころおい、不死身《ふじみ》の泰軒は、燃え狂ういわし屋の屋内を火の粉の一つのように駈けまわって、
「あ! ここにも一つ死んでおるぞ! これで三人、いや、下の道に落ちたのがひとり、合計今夜は四人の収穫か。ワッはっはっは!」
と、眉毛に火のつくなかで自若たる泰軒、ふところをさぐって取り出したのは殺生道中血筆帳の一冊、禿筆《ちびふで》の先を小松数馬の斬り口へ塗って血をつけ――。
すけ川の宿にて四人也。
トップリと書きこみながら、念仏とともに一句浮かんだ。
「春浅しほだ火に赤き鬼四つ……南無阿弥陀仏」
こうして二十四名に減って助川をあとにした月輪軍之助の一行はつづみの与吉をみち案内にたて、その夜のうちに石神までたどりつき、翌《あく》る一日を宿屋に休息してゆうゆう傷の手当、刀のていれに費やして夕ぐれとともに石神を発足、くらい山道を足にまかせて、眠っている中納言様の御城下|常陸《ひたち》の水戸を過ぎ、やがて利根川に注ぐ支流鞍川の渓谷へさしかかったころから……。
雨。
そして風。
一山、ごうッと喚き渡って、峡間《はざま》にこだま[#「こだま」に傍点]し樹々をゆすぶる深夜のあらしだ。
「こりゃたまらぬテ!」
「ひどい吹き降りになりおったな」
言いながら水を越す用意。
鞭声粛々《べんせいしゅくしゅく》夜河をわたる。
広い河原だ。
黒い石が累々《るいるい》と重なりつづいて古びた水苔で足がすべる。蛇籠《じゃかご》を洗う水音が陰々と濡れそぼれた夜の底をながれていた。
右は、遠く荒天にそびえる筑波《つくば》の山。
ひだり、阪東太郎《ばんどうたろう》の暗面を越えて、対岸小貝川一万石内田|主殿頭《たのものかみ》城下の町灯がチラチラと、さては香取、津の宮の家あかりまで点々として漁火《いさりび》のよう――。
それへ向かって、狭い浅い鞍川の河水が岩角をかんで白く咲きつつ押し流れているのだ。
うしみつ。
咆《ほ》える風に横ざまの雨滴《うてき》。
「よいか! 集まって渡れや!」
「浅いが、水が早いで、足をとられんようにナ、みんな気をつけて来《こ》!」
口ぐちに叫びあいつつ、残士二十四の月輪の援
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