輪陣《りんじん》を左右に分けておいて、さっそくのつばくろ返し手ぢかの小松数馬の胸板を刃先にかけてはねあげたから、いたえず数馬、※[#「てへん+堂」、第4水準2−13−41]《どう》ッ! と弓形にそる拍子に投げ出された長刀白線一過してグサッ! と畳に刺さった。
とたん! 側転《そくてん》した泰軒、藤堂粂三郎とパチッ! やいばを合わせる……と同秒に足をあげて発! そばの一人を蹴倒しながら、長伸、軍之助を襲うと見せかけ、隙に乗じて泰軒、ついに壁を背にして仁王立ち……再び、刀をさげ体を直《ちょく》に、なかばとじた眼もうっとりと、虚脱平静《きょだつへいせい》、半夜深淵をのぞむがごとき自源流水月の構剣……。
またしても入った不動の状。
せきれいの尾のようにヒクヒクと斬尖《きっさき》にはずみをくれながら、月輪の刀塀《とうへい》、満を持して放たない。
往来に立ってワイワイさわいでいる人々の眼にうつるのは。
二階の障子に烏のように乱舞する人影と人かげ……。
と! 見る間に。
その障子の一枚を踏み破って、のめるように縁の廊下に転び出た大兵《たいひょう》の士――月輪剣門にその人ありと知られた乾《いぬい》万兵衛だ。
が、おなじ瞬間に追撃《おいう》ちの一刀!
利剣長閃、障子のやぶれを伸びて来たかと思うと、たちまち鮮血|鋩子《ぼうし》に染み渡って、
「あッ痛《いた》……ウッ!」
と万兵衛、肩口をおさえて、がっくりそのままらんかんに二つ折れ、身をささえようとあせったが、肥満の万兵衛|何条《なんじょう》もってたまるべき! おのが重体《おもみ》を上身に受けて欄干ごし、ドドドッ! と二、三度|庇《ひさし》にもんどりうったと見るや、頭部から先にズデンドウ、うわアッと逃げ退く見物人の真ん中へ落ちて、
「ザ、残念! ざんねんだッ!」
と、ふた声三声くち走ったのが断末魔、地に長く寝て動かずなった。
二階の博刃《はくじん》は今し高潮に達したとみえ、ふみきる跫音《あしおと》、鉄《あらがね》とあらがねの相撃ちきしみあうひびき、人の心胆を寒からしめる殺気、刀気……ののしるこえ、物を投げる音! たちまち! ザアッと障子が鳴って黒い斑点が斜めに散りかかりつつみるみる染みひろがっていくのは、泰軒か月輪団か、さてはまた一人斬られたとみえる。
こわいもの見たさに刻々あつまってくる路前の人出も、あアレヨ
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