輪一刀流と、秩父に伝わる自源流と、ふたたび刃を合わす機会もなくすぎて来たのだが……。
 助川、江戸まで、四十一里半。本陣鰯屋の広土間。
 ドヤドヤとくりこんで来た月輪組の連中は、ただちに階上の二間をぶっ通して借りきって旅の汗を洗いにただちに風呂場へ駆けおりる者、何はさておき酒だ酒だとわめくもの、わるふざけて女中を追いまわす者――到着と同時にもう家がこわれるように大にぎわい。
 何しろ若年の荒武者が二十八士も剣気を帯びての道中だから、その喧噪《けんそう》、その無茶まことにおはなしにならない。
 あまりの騒動に宿役人が出張して来て、身がら、いく先などを型《かた》ばかりにしらべていったが、これは師範代各務房之丞が引き受けて、金比羅詣《こんぴらまい》りの途中でござると開きなおり、見事にお茶らかして追い返してしまう。
 あとには。
 気を許した一同が、五、六十本の大小を床の間に束《たば》で立て掛け、その前に大胡坐《おおあぐら》の月輪軍之助を上座に、ズラリと円くいながれて、はや酒杯が飛ぶ、となりの肴を荒らす、腕相撲、すね押しがはじまる……詩吟から落ちてお手のものの相馬甚句、さてはお愛嬌《あいきょう》に喧嘩口論まで飛び出して、イヤハヤ、たいへんな乱痴気ぶりだ。
 旅中はおのずから無礼講、それに、何をいうにも若い者のこととて大眼に見てかあきらめてか、それともあきれたとでもいうのか、剣師軍之助はこの崩座《ほうざ》を眺めて制しようともせず、やりおるわいと微笑みながらチビリチビリと酒をふくんでいると。
 いつしか話題が泰軒へ向いて、
「力はあるが、大した剣腕《うで》ではないで、こんど出て来たら、拙者が真ッぷたつにしてくれるテ。なあ、汝《うぬ》らア騒がずと見物しとれ」
「何をぬかしくさる! おれは、きゃつの業《わざ》の早いのが恐るべきだちゅうんだ、岡崎がかわされて手をついた時の不様《ぶざま》ってあっか」
「さようでございます。どうもあのとおり乱暴な乞食なんで、見ておりましても手前なんかは胸がドキドキいたしますが、でもまあ、皆さまというお強いお方がそろっていらっしゃいますので、このところ与の公も大安心でございます、へい」
「そうとも! そうとも! 何があっても町人はすっこんでおろ!」
「なんともはや、その言葉一つが頼みなんで――ま、ま、一ぱい! 酒は燗《かん》、さかなはきどり、酌は髱《たぼ》
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