の坤竜丸《こんりゅうまる》を佩《はい》して江戸市中に左膳を物色し、いくたの剣渦乱闘をへたのち――乾雲はおさよが、坤竜はお藤が、ともにこっそり盗み出して、ここに二刀ところを一にするかと見えたのも一瞬、こんどは逆に栄三郎が乾雲を、左膳が坤竜を帯びて雪中法恩寺橋上の出会い――。
 任侠《にんきょう》自尊の念につよい栄三郎の発議によって、両人雲竜二剣を交換して雲は左膳へ、竜は栄三郎へと、おのおのその盗まれたところへ戻ったが。
 婦女子が盗人のごとく虚をうかがって持ちきたった物なぞ、なんとあっても納めておくことはできぬ。ここは一度、左膳に返しても、二度《ふたたび》つるぎと腕にかけて奪還するから……と、この栄三郎の意気に感じて、左膳もこころよく坤竜を返納したのは、二者ともさすがに侍なればこそといいたい美しい場面であった。
 が、すぐそのあとに展開された飛雪血風の大剣陣。
 しかし、それもほんの寸刻の間だった。
 折りもおり、土生《はぶ》仙之助の一行が左膳の助剣にあらわれたので、乱刃のままに長びいてはわが身あやうしと見た栄三郎、ひそかに、再び左膳と会う日近からんことを心中に祈りながら、橋下の暗流――雪の横川へとびこんで死地を脱した。
 あとには左膳、仙之助の連中が声々に呼びかわして、橋と両岸を右往左往するばかり……。
 それもやがて。
 暗黒《やみ》の水面に栄三郎を見失って長嘆息、いたずらに腕を扼《やく》しながら三々五々散じてゆく。
「ナア乾雲! てめえせえ俺の手にありゃア、早晩あの坤竜の若造にでっくわす時もあろうッてものよ、雲竜相ひくときやがらあ……チェッ! 頼むぜ、しっかり」
 と左膳、片手に赤銅《しゃくどう》の柄《つか》をたたいて瓢々然《ひょうひょうぜん》、さてどの方角へ足が向いたことやら――?
 かくしてまたもや。
 悪因縁《あくいんねん》につながる雲竜《うんりゅう》双剣《そうけん》、刀乾雲丸は再び独眼片腕の剣鬼丹下左膳へ。そうして脇差坤竜丸は諏訪栄三郎の腰間《こし》へ――。
 それは、まわりまわってもとへ戻る数奇不可思議《すうきふかしぎ》な輪廻《りんね》の綾であった。
 しばらく頭《こうべ》をめぐらして本来の起相《きそう》を見れば。
 刀縁伝奇《とうえんでんき》の説に曰く。
 二つの刀が同じ場処に納まっているあいだは無事だが、一朝乾雲と坤竜がところを異にすると、凶《きょ
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