て置いたりしたのが、大之進の運の尽きであった。玳瑁の櫛も三次の推量どおり、大之進が辰に与えたものであった。
お白洲《しらす》に出ても大之進は口を緘《とざ》して語らなかった。
「この者をお咎めあるな。不浄人に力を藉して拙者を絡めたくらい、下郎は何事も存じ申さぬ。あくまでも伊丹大之進ただ一人の所存でござる。」
何を訊かれてもかく言うだけだった。早耳三次は家主甚右衛門ならびに茶屋町町年寄一統とともに、改めて辰のために何分のお慈悲を願い出たという。
底本:「一人三人全集1[#「1」はローマ数字、1−13−21]時代捕物釘抜藤吉捕物覚書」河出書房新社
1970(昭和45)年1月15日初版発行
入力:川山隆
校正:松永正敏
2008年5月20日作成
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