駈け入って来る。
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台察児《タイチャル》 兄上! ただいま成吉思汗《ジンギスカン》が、不敵にも、単身城へ乗り込んでまいりました。(合爾合《カルカ》の死骸に気づき)おお! 兄上! 嫂上をお手討ちに――!
札木合《ジャムカ》 なに? 成吉思汗《ジンギスカン》が? (と勢い込んで)この上おれを嘲弄しようというのか。よし!
台察児《タイチャル》 兄上、嫂上の仇です。畜生! 膾《なます》に刻んでやる!
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と台察児《タイチャル》、露台の上手へ向って剣を振り、合図する。槍、抜刀を携えたる城兵五、六人、そっと出て来て、露台の中仕切りの陰に潜み、伏兵となる。札木合《ジャムカ》と台察児《タイチャル》は、あわただしく眼で相談し合い、その中仕切りに懸けてある旗を取って、合爾合《カルカ》の死体を覆い、またその上に王座の後ろの丈高き二枚折りの刺繍屏風を持ち来って横ざまに被せ、屍骸を隠す。そうして、両人気を配って待つところへ、下手の扉より、総大将の武装美々しき成吉思汗《ジンギスカン》、微笑を含んで足早やにはいって来る。
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