ン》のために打ち負かされるのも当り前、ああ情ない――。
札木合《ジャムカ》 ええい、乱心でもよい。狂気でもよい。なに? なに? うむ、わかった! 貴様なんだな、成吉思汗《ジンギスカン》を想っていたな。いや、きゃつを慕っているな。あっ、そうだ! 貴様、前から、昨夜のような機会を待っていたのだろう。(嫉妬に狂って)さあ、言え。成吉思汗《ジンギスカン》を思っているか、成吉思汗《ジンギスカン》を恋しているか、言え! 言え! 言わぬか。おのれ、これでもかっ! (やにわにばっさり斬りつける)
合爾合《カルカ》姫 (深傷を押さえてよろめきながら、夢みるような顔。間)――成吉思汗《ジンギスカン》!
札木合《ジャムカ》 何いっ――!
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また一刀を浴びせる。合爾合《カルカ》はにっこり笑って落入る。札木合《ジャムカ》は呆然と妻の屍を見下ろして立つ時、遠く進軍|喇叭《らっぱ》の音が起り、開城を喜ぶ部落民のどよめきが湧く。露台のはるか向うの山間に、白い旗が小さく揺れながら、長くつづいて登って行くのが望見される。札木合《ジャムカ》は魂を落したように、ふらふらと立っている。台察児《タイチャル》
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