のだ。貴様、よくそうやっておれの前に立てるな。もう貴様は、昨日までの貴様ではない。敵将|成吉思汗《ジンギスカン》に――。(蒼白に顫えつつ)これ、合爾合《カルカ》、おれの心も知らずに、よくもこんな差出がましいことをしてくれたな。貴様は、城の身替りに立ったという喜び、城下の百姓町人どもの犠牲になったという心の慰めがあるだろうが、おれは、こ、このおれは――えいっ! 何とか言え! 何とか言わぬかっ!
[#ここから3字下げ]
合爾合《カルカ》の肩を掴んで揺すぶるが、はっと気づいてその手を放す。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
札木合《ジャムカ》 (ヒステリックに)えいっ、汚らわしい! そ、その肩を成吉思汗《ジンギスカン》めが抱いたのか――ああ、おれは――妻の身体で敵に許しを乞うた、こ、このおれの苦しさは、ど、どこへ持って行けばいいのだっ!
合爾合《カルカ》姫 (冷やかに)誤解でございます。いかにも、妾は成吉思汗《ジンギスカン》の陣屋に一夜を明かしはいたしましたけれど、あの人は妾に、指一本触れませんでした。
札木合《ジャムカ》 なに、指一本触れなかった? 指
前へ
次へ
全94ページ中85ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング