ううむ、さすがは名にし負う成吉思汗《ジンギスカン》の大軍。お! もう斡児桓《オルコン》河を渡ったな。
参謀一 あれあれ、先陣はすでに、塔米児《タミイル》の川岸まで進んでおります。
札木合《ジャムカ》 (小手をかざして)あの、成吉思汗《ジンギスカン》軍の先頭に立って進んで来る、あの四人の者は誰だ。
参謀二 あれこそは、成吉思汗《ジンギスカン》の配下にその人ありと聞えた、砂漠の四匹の猛犬、哲別《ジェベ》、木華里《ムカリ》、忽必来《クビライ》、速不台《スブタイ》の四天王にござります。黒豚の胴を輪切りにして、その生血を啜り合い、生死を誓った四人組の将軍です。
札木合《ジャムカ》 (どきっとして)して、あの第二陣に駒を進めて来るのは?
参謀三 あれは、亦魯該《イルガイ》、蒙力克《モンリク》の二将軍の率いる、進むを知って、退くを知らぬ荒鷲と称する騎兵軍団でござります。
札木合《ジャムカ》 (募り来る不安を隠し)なに、荒鷲だと?――それから、あの、それそれ、第三陣に、灰色の狼のごとく、砂煙りを上げて馬を駆って来るのは?
参謀四 はっ。あれぞ総大将|成吉思汗《ジンギスカン》の弟、合撒児《カッサル》でご
前へ
次へ
全94ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング