ムカ》 (突然哄笑して)ははははは、目下旭の昇る勢いの成吉思汗《ジンギスカン》だ。人物才幹、この蒙古はおろか、東は遠く金の国、西は花剌子模《ホラズム》の果てまで、並ぶ者ない名将と聞いているが、古い恋の意趣遺恨を根に、この孤立無援の山寨を包囲して、あくまで陥さねば気が済まぬとは、噂ほどにもない成吉思汗《ジンギスカン》だ。いや、箔の剥げた成吉思汗《ジンギスカン》だ。小さな男だ、けち[#「けち」に傍点]な男だ! おれはあいつの面へ、この罵りを浴びせながら、笑って死にたいのだよ、はっはっは。
台察児《タイチャル》 兄上!
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刻々殖えた避難民の群集は、片隅に飢のために倒れ、呻きつつ聞き入る。一矢飛来するごとに、悲鳴を揚げる。
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札木合《ジャムカ》 今日は一気に揉み落そうとかかっているらしいな。城兵はひっそりしている。もう戦う気力も失せたのか。
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暗然と城寨の端へ歩み寄って、堡塁から下を覗き、
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札木合《ジャムカ》 
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