なかった。そんなような、毎日だった。
若松屋惣七は、遠く離れて、いっそうお高のことを真剣に思うようになった。龍造寺主計は、久しぶりに若松屋惣七を見て、そして、惣七といっしょに来るであろうと思っていただけに、またいっそうお高のことを思うようになった。ふたりは、ときどきぼんやり考えこんで黙りこんでいることがあった。
どっちか、先に沈黙に気がついたほうが、きいた。
「おぬし、何を考えている」
「お主こそ、何を考えておった」
二人とも、お高のことを考えていたとはいわずに、
「なに、ちょっと――」
と、同じことばを同時にいいあって、それから、いっしょに笑った。そして、ふっとまた黙りこくって、両方ともお高のことを考えた。
二
そのお高のことで、一空和尚《いっくうおしょう》から飛脚が来たのだった。王子権現の祭で、日本一太郎と名乗るお高の父相良寛十郎の掛け小屋で火事があって、磯屋五兵衛が焼死して、お高が自由の身になったというのである。
この手紙を見ると、仕事もだいたい片づいたところだったので、若松屋惣七は、すぐ江戸へ帰ることになったが、龍造寺主計も、しばらく江戸を見ていない
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