となるべきことをしらせた者には礼をする意味の貼り紙をさせたのは忠相だった。
その貼り紙が出て、日本一太郎なる手妻使いの芸人が、じぶんこそそのお高の父の相良寛十郎であると名乗り出て、そのために、和泉屋の口をはじめ、お高に巨額の財産が移ったのだが、事実は、その日本一太郎は、磯五の思いつきで、磯五に頼まれて、父と称して出たというのだ。
磯五は、京阪《かみがた》で日本一太郎に会ったことがあるので、木場の甚の口やなどで日本一太郎を思い出して、ちょうどぐあいよく江戸に来て両国に掛かっていることがわかったから、似ているらしいからこれなら通るだろうと名乗らせて出したところが、案のじょううまく通ったのだった。
「あの磯五てえ男も、利口なようで馬鹿なやつでございます」
木場の甚が、何かしんみりした口調でいい出していた。忠相は口をつぐんで、むう、むう、というような音を舌の上でころがしながら、じろりと木甚を見ただけで何もいわなかった。木場の甚がつづけた。
「あの日本一太郎を真物《ほんもの》の相良寛十郎とは知らずに、すっかり贋《にせ》ものを仕立てた気で出してよこしたのだから、笑わせるじゃあございませんか」
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