の手妻使い、日本一太郎と申すものの掛け小屋に失火がございまして――」
「これこれ」忠相が、ちょっと声を高めると、次の間との襖を背に、ぼんやり控えて殿と木甚との会話《やりとり》を聞いていた用人の伊吹大作《いぶきだいさく》が、かしこまって、耳を立てた。忠相は、いや、お前ではないというように、ちらとそっちへ笑顔を向けて、木場の甚へつづけた。
「これ、気をつけてものを申せ。失火とは火を失う。過失、失態などと申して、すなわちあやまちである。その見世物小屋の火事はあやまちであったというのか。証拠は、あるか」
木場の甚は、にっこりした。
「証拠は、ございません。しかし、つけ火にしちゃあすこし腑に落ちませんので」
「放火ならば、何人《なんぴと》か火を放ったものがあるであろう」
「それは、ございましょう」
「わかり切った話じゃ。何が腑に落ちん」
「はい、つけ火でないといたしますと、あまり都合のいいときに燃え出しましたようで。はい、何のことはないまるで、磯屋五兵衛を焼き殺すために――」
「はて。だから、放火にきまっておる」
「つけ火といたしますれば、下手人《げしゅにん》を出さねばなりませぬ」
「放火した
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