、それでそんなことをいうけれど、おいらは考えることがあるのだ。必ずこれで当たりを取って、おめえの名を売ってやるし、おらあ第一、こんだの舞台を最後に、手品にも何にも、芸人渡世はこれですっぱり打ち切るつもりでいるのだ。
 いや、芸人商売ばかりじゃねえ」と、日本一太郎は何か急にしんみり考えこんで、
「この世の中におさらばするかもしれねえのだ」
「何をいっているんだい」
 天人娘夢浮橋の衣裳が届いてきたので、お駒ちゃんは、その、日本一太郎の考案になる、羽衣の天人のような着付けで、本式に稽古の身振りを励みながら、
「あたしの出るところは、ほんのちょっぴりなんだろう? 当てれば、日本一太郎というお前の名が上がるばかりさ。お前の名を上げてあげようと思って、あたしはこんなに稽古に力を入れているのさ。いやだよ。じぶんのことなんか考えてみたこともありあしない。第一、お前、この世の中におさらばするなんて縁起でもない。莫迦ばかしいこというもんじゃないよ」
「いんや、そうでねえ。おいらはもうこの年齢《とし》だからいつどんなことがあるかもしれねえというんだ」
 お駒は、日本一太郎がときどきへんなことをいったりする
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