と思ってねえ」
「なあに、そんなことはねえ。それどころか、ま黙って見ているがいい。おめえは今度の舞台で、江戸中の評判になるのだ。この日本一太郎がついているのだ。その日本一太郎が大丈夫金の脇差《わきざし》と踏んでいるのだ。案ずるこたあねえよ。万事おいらにまかせて、おめえは、ただ、みっちり稽古を励みな」
日本一太郎は、こういい残して、その藤代町の木更津屋を出ると、その足で式部小路の磯屋へやって来た。そして、磯五の居間へ通されて、ぼんやりした顔で待っているところへ、ふところ手をした磯五がのっそりはいって来たので、日本一太郎は、睡《ねむ》そうな眼で見上げて、ふんと小鼻に皺をつくった。
挨拶もないのだ。それほどの仲なのだ。
「おう、磯五え」日本一太郎が、口の隅から押し出すようにいった。「お高坊のほうがうまくいって、おいらもおめえも、こんな安心なことはねえ。なあ、祝いごころで、ひとつ手妻ばかりの小屋をあげようと思うのだが、どうだ大将、見に来ねえか」
舞馬《ぶま》
一
磯五は、お高に大金がこようとして、だいたい本人ということがわかっていても、お高の父として死んだ相
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