お高は、そのおせい様のことばがおかしくて、今度は急に、おなかをかかえて笑い出した。おせい様も、お高の手の甲を一打ちたたいて、陽気に笑い出していた。二人は、涙をふきながら長いこと笑いくずれていた。
三
日本橋式部小路の磯屋の奥ざしきで、磯五が、十七、八の女を膝にのせてたわむれていた。その女は、お美代といって、奥向きの仕事をする女中であった。お美代は、出入りの鳶《とび》の頭《かしら》の口ききで、草加《そうか》のほうから来ている女であったが、すっかり江戸の水に洗われて、灰《あく》ぬけしてきていた。膚の白い、ぽっちゃりした、眼の涼しい娘だった。
はじめて来たとき、何であったか、何か菜をつむように台所から命じられて出て来て、中庭に迷いこんでまごまごしているところを磯五に見つかって叱られたことがあるので、磯五には、そのときから、印象に残っている女であった。
中庭は陽がよく当たらないので、露がおりたように、草がしめっていた。お美代は、磯五に叱責《しっせき》されて、しおしおと台所口のほうへ帰って行ったが、着物を濡らすまいとして、裾を引き上げて歩いていた。ふくらはぎのほうまで見えて
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