ですしねえ。
 それに、わたしは、その龍造寺何とか様とおっしゃるお侍が、掛川においでになるのが、心配で、何かあぶないことになりそうで、それで一つは、お高さまを掛川へ出してあげたくないのでございますよ。男の方は、どんなお友だちでも、女子《おなご》のこととなりますと、別でございますからねえ」
「さようでございますか」
「そうでございますとも。お高さまが若松屋さんを慕っておいでなさるんでしたら、いっそう掛川行きはおよしなさいましよ」
 お高は、急にわっと泣き叫んで、おせい様の膝に突っ伏した。おせい様も、おろおろ声なのだ。おせい様は、泣いているお高を慰めていいか、そして、どうして慰むべきであろうかと考えているうちに、じぶんでも泣けてくるのだ。
「何も泣くことはありませんよ。世の中は、うつろなようでうつろではございませんよ。わたしは、お高さんが大好きでございますからねえ。あなたには、わたくしのような小母《おば》さんがついていますと、ようございますよ。わたしはご存じのとおりの馬鹿でございますけれど、理解《わか》ることだけはわかるつもりでございますよ。人を思うことが、どんなに苦しいことか」
 おせい
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