すねえ。まだ夫婦ということになっているのでございますねえ」
「はい。そうでございます。一度、縁切れ状まで書いてくれましたのに、わたくしが母のお金を受けつぐことを、どこからかかぎ出しまして、その離縁状もあとから引ったくって破いてしまいましてございます。どうしても別れると申しませんのでございます。
あの人は、お金が眼当てでございますからねえ。こうなれば、どんなことがありましても、名だけでも夫婦ということにしておきたいのでございますよ。あさましい人でございますよ」
二
「お高さま、そんならなお掛川へ行ってはいけませんよ。磯五さんという人があって、若松屋さんと夫婦《いっしょ》になることができないのに、若松屋さんといっしょにいては、若松屋さんも苦しゅうございますし、あなたも、苦しゅうございますからねえ。両方がお可哀そうでございますよ」
「でも、こうして離れていて、両方が可哀そうだとはおせい様は、お考えになりませんでございますか」
「それは、想いあっていて、そうして離れていらっしゃるのは、お可哀そうでございますけれど、でも、掛川へいらしっても、晴れて夫婦《いっしょ》にはなれません
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