が、女をつかんで離さぬ力も、考えてみれば、不思議な気がする。いや、どちらも不思議なことはないのかもしれぬが」
「おせい様が磯五のことを思い切れずにいるものですから、わたくしがおせい様のところへ行くと、おせい様を苦しめるようなもので、いつも、長くはいられないのでございます」
「そんなところへ行かんでもよいではないか。何ゆえさように食客のようなまねをして歩こうというのだ。金はどうしたのだ」
「ひとりでぼんやりしてはいられませんでございますもの。それに、あのお金はまだほんとに自分のもののような気がいたしませんでございます。手をつけるのがいやでございます」
「高」若松屋惣七は、伸び上がるようにして、声を低めた。
「掛川へ来ないか」
「掛川へ――」
お高は、おうむ返しにくりかえしながら、龍造寺主計の顔を思い出していた。龍造寺主計は、まだはるかにお高にこころを寄せているに相違ない。お高には、それが感じられるのだ。
お高は、若松屋惣七と龍造寺主計と、ふたりの男にはさまれることを思うと、とても掛川へ行く気にはなれなかった。行けば、この二人のあいだに、何か恐ろしい問題が起きそうな気がして、それは、ど
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