しいはずなのが、ちっともなつかしくなかった。ただおかしかった。彼女にとって、日本一太郎はやっぱり日本一太郎だった。父の相良寛十郎ではなかった。父の相良寛十郎は、あの古石場で死んだ、静かな、学者肌の、陰気な、気の抜けたような、蒼白い――彼女が父と信じてきた相良寛十郎だった。
 それでいいのだ。そのほかに父はないのだ。いらないのだ。たとえほんとの父でも、この相良寛十郎は、もう今は日本一太郎以外の何ものでもない――。
 手品師の父、父というよりも、なくなった母の良人だ。お高は、珍妙な生物を見るような眼で老人を見た。
「おすわんなさい」
 日本一太郎は笛みたいな声を出すのだ。

      四

 鋭い視線がお高をなでた。
「ははあ、高音さんかえ。おゆうにそっくりだな。わしにはあまり似ておらん」
 お高は不思議な怒りを感じて、黙って、にらむように日本一太郎を見かえしていた。
 それからいろいろと話になったのだが、お高が、じぶんが受けついだ柘植の財産のことを切り出して、父の分もあるのだし、それと、そのほかからもいくらでもとってもらいたいというと、父の日本一太郎は、金銭のことなど、もう実際何の興味
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