と、考えてもいやでございます。それも、いろんなむずかしいことがございまして、証人がいるとか何だとか、くさくさすることばかりでございます。お金も、くるかこないか、当てにならないのでございますよ」
「では、どうするつもりなのだ」
「どうするつもりって、何も考えておりませんでございます」
「その金が手にはいれば、一生食うに困らんというわけだな」
「はい」
「なぜもっと詳しく話してくれんのだ」
 お高は、まだ決まりもしない財産のことを話すのがいやであった。気恥ずかしかった。話すのはいいが、財産がこなかった場合のことを考えると、うれしがっていてはずれたように思われるのが、たまらなかった。また、まだ手にしないうちから話しても、誰も信じてくれる人がないようにも思えた。彼女じしんまだぴったりと現実のものに考えられないことを、どうして人に、夢でないように伝えることができるであろうかとあやぶまれた。
 で、いっさい黙っていることにしたのだが、若松屋惣七にだけは、だいたい話しておきたいような気もしたけれど、しかし、同じ理由からやはり黙っていることにした。
「いったい、いつはっきりわかるのか」
 若松屋惣七が
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