みつめていた。
「さあ、書いてくださいよ」
 磯五は、黙っていた。黙ったまま、そっと眼を動かして、お高の手もとの証文の束をうかがった。やにわに、む! と小さくうめいて、獣のようにとびかかった。

      五

 お高は、子供が引っくり返るように、思い切りよく引っくり返っていた。磯五は、からだいっぱいにお高を押し倒して、証文をつかんだ。が、磯五の目的は、証文ばかりでないようで、証文を握っても、お高のうえをどこうとしなかったから、お高は真剣に狼狽した。
「いけません! 声を立てますよ」
 お高が大きな息を吸うと、磯五のにおいが鼻の奥までしみこんできて、お高は、ちょっとうっとりしそうになった。自分をしかって、どさどさもがいていると、磯五はあきらめて、たち上がった。着物を直しながら、すっぱそうな笑いを落とした。
「冗談だ――」
「冗談でも、いけませんよ」
 お高も、そこここ乱れたところをつくろっていた。磯五をそんなに近く感じたことがきまりが悪くて、顔が上げられない気もちだった。その膝の上へ、磯五の手から証文の束が投げ返された。
「冗談だ。こんなものはいらねえや」
「いらなければなお縁切り状
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