して、狂暴な気もちのうちにはかないものを感じながら、ゆがんだ笑いでいった。
「よく来たな。ずいぶんこっぴどくやっつけやがったぜ」

      四

「お前さまはあのくらいいわなければ性根へ通じませんのですよ」
「御挨拶だな」
「きょう用があって来たのですよ」
「ずっと雑司ヶ谷にいるはずじゃあなかったのか」
「いるはずだって、用があれは出て参りますでございますよ。このことでお眼にかかりに来たのです」
 お高は、手の、小さな風呂敷包みをあけた。それはおせい様が若松屋惣七から資本を取って磯五へまわしたときに、磯五が、おせい様がいらないというのに、堅いところをみせようために、むり押しつけに入れておいた借用|申候《もうしそうろう》一札之事《いっさつのこと》という証文であった。
 そのほか、磯五は、おせい様から大小何口となく金子《きんす》の融通を受けているのだが、そのたびに、おせい様はそんな水くさいことは不用だというのに、自分から進んで、何の仲でもこれだけは別である、きまるところだけはきちん[#「きちん」に傍点]ときまらなければ、乱れて面白くないなんぞといって、借用証文を納めてきたのだった。
 
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