とのあいだのこういう非常時に処する彼一流の機敏な考えから、平然といい出していた。
「おめえに隠しておくのはよくねえ。すっぱりいってしまおう。おいらはおめえと夫婦《いっしょ》になるわけにはいかねえのだ」
そして、女房があるのだと打ち明けると、お駒ちゃんはなかなか信じなかったが、だんだん事実《ほんとう》とわかって身をふるわせて泣き伏してしまった。お駒ちゃんはまじめに磯五のことを思っていたのだ。お駒ちゃんとしては珍しい感情だった。それがこんなことになってもう生きている甲斐《かい》もないといった。
磯五は、それを慰めるように、梅舎錦之助を持ち出して、その人といっしょになったらいいじゃないかといったが、お駒ちゃんは承知しなかった。磯五は、さらに笑いたいのを押えて、お駒ちゃんの肩にやさしく手を置いた。
「おいらの妹になりすましていたから、その立派なお侍とも近づきになれたんじゃねえか」
「いやだよ。勝手なことをいうもんじゃあないよ。さんざん人を玩具《おもちゃ》にしておいて、きっとこの仕返しをするから――」
磯五はやっとお駒ちゃんをしずめて、お駒ちゃんが久助の娘であって、したがって磯五の妹でない
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