磯五は、ほかのことを考えてるのだ。
「おせい様、わたしは久助の庖丁《ほうちょう》が大好きなのです。ねえ、おせい様、あいつを磯屋の料理人《いたば》によこしてくれませんかねえ」
「まあ、藪から棒に。でも、よろしゅうございますとも、そうなれば、久助も大喜びでございましょうよ」
「まだ本人にきいてはみないのですが――」
「ほんとに、お店のほうへおつれなさいましよ。そして」おせい様は、赧くなって、ためらった。「わたしたちがいっしょになるようなことになったら、また二人で使いましょうよ」
 磯五は、白い花が咲くようににっこりして、おせい様の手を取って膝のうえにもてあそんだ。
「わかりませんでしょうね、お内儀さんの行方は」
 おせい様が、いっていた。
 磯五は、ほっと溜息《ためいき》をついた。
「生きているというので、いろいろ捜してはいるのですが、皆目知れぬのですよ」
「お内儀さんはなくなったといい、生きていらっしゃるといい、どっちも人のうわさなのでございますからそれを確かめませんと、わたしたちは、晴れていっしょにはなれませんよねえ。困りましたねえ」
「困りました。ほんとに、こんなに困ったことはござい
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