のですよ。わっしどもが世話に立っている柘植の家とは、何のかかわりもねえのですよ」
これで、お高が父として死に水まで取った相良寛十郎が、ほんとのおゆうの良人の相良寛十郎でないことだけは、一空さまの思ったとおり、ますます事実に相違なかったが、この木場の甚は、そのために、そうして、永年《ながねん》さがしてきたほんもののお高に会ってことばまでかわしながら、頭から別人と思いこんで、そのまま放《はな》してやって、いまだに、預かっている財産を渡すために、お高の現われるのを待っているのだ。
世の中というものはこうして、ちょっとのことで、こうもくいちがうものであろうかと、一空さまは、実に不思議な相《すがた》を見せられた気がした。
四
そのとき、木場の甚が、お高の姓が柘植であることを知りさえすれば、何の問題もなく、おゆうの財産はそっくりとうにお高の手へ移っていたのだ。一空さまが、あらためてそのことをいうと、木場の甚は、急に真剣になって膝を進めた。それから一空さまが、お高がおゆうの娘に相違ないことをいろいろな方面から証明すると、木場の甚もだんだん乗り気になってきて、
「わたしはこの年齢
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