るという以上、もうそれに決まったと勢いこんで、わたしは自分で出かけて行って、その相良寛十郎てえ人の死顔をあらためたのです。
 すると、名が同じなだけで、似ても似つかねえ別人でした。父がちがう以上、その娘という女も、おゆうさんの娘であるわけはねえから、わたしは、ちょっと娘にくやみを述べただけで、あとのことはすっかり乾児《こぶん》どもにまかせて、そのまま帰《けえ》ったのです。
 ああ、あの娘のこってすかい。あの娘のことなら覚えていますよ。なるほど、おやじが相良寛十郎という人だったから、柘植のおゆう様の娘御と思いなすったのもむりはねえが、あれは、縁もゆかりもねえ、全くの他人でございます。わっしどもの探している相良寛十郎さまなら、おゆう様のところでもよく会って、私もお顔を識っているのです。見間違うわけはねえのです。
 娘さんは、親娘《おやこ》三人づれで上方の旅へ出かけるとき、ほんの赤児《あかご》でごぜえましたから、いま成人していらっしゃれば、顔を見てもわかるわけはねえのですが、なに、あの古石場にいなすった娘さんなら、大違いですよ。父御《ててご》さんがおゆうさまの良人と同じ名だっただけで、別人な
前へ 次へ
全552ページ中385ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
林 不忘 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング