消えうせた形になっているものの、いつかは誰か名乗り出て和泉屋へ手をかけてくるであろうと、それを見越して、それだけの額は、かりに柘植の世話役というようなものを立てて、その者へすっかりまかせてあるというのだ。
 律儀な、筋の通った話である。
 伊之吉は、語をつないで、
「良人の相良寛十郎さまも、おゆう様の財産からいくらかわけてもらったという評判でございました。
 ほかの、おゆう様が初代の宗庵先生から受け継いだ柘植家のものは、そっくりその娘のお高さまへ遺《のこ》されているわけなので――このへんのことは、その、どなたか柘植の方がお出になるまで、当店《こちら》と話し合いで柘植様の世話役に立っていてくださる人におききになれは、すっかりおわかりになることと存じます。そのお方は、ふか川で名の売れた木場《きば》の甚《じん》とおっしゃる顔役でございます」
 木場の甚というのは、お高の話にも出た、古石場の家で相良寛十郎が死んだときに、そのあと始末を引き受けて、いっさいがっさいやってくれたという人であった。この、お高が父と思いこんでいる、古石場で死んだ相良寛十郎なる人物が、ほんとのおゆうの良人の相良寛十郎であ
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