《はくさん》神社、これは小石川の総鎮守で神領三十石、神主|由井氏《ゆいし》奉祀《ほうし》す。祭るところの神は、加賀《かが》の白山《はくさん》に同じ、九月の二十一日がおまつりで、諸人群集、さかんなものである。黒文字の楊枝《ようじ》と、紙でつくった弓矢をお土産《みやげ》に出した。
こういうふうに、縁日や祭礼もないことはない。町内で催し物があり、山車《だし》が出る。年によっては、御輿《みこし》が渡御する。それはいいが、お祭に喧嘩《けんか》はつきもので、ふだんからいがみ合っている一町と一町が、事につけ物に触れ、あらそいの種をつくって、些細《ささい》なことから血の雨を降らすようなことも、めずらしくない。
この、金剛寺門前町と鷹匠町がそれで、昔から、犬猿《けんえん》のあいだがらだったから、やれ、縁日の縄張《なわば》りがどうのこうの、祭の割り前が多いのすくないのと、しじゅうごたごたをつづけている。それに、若い者は血が多い。祭の雑沓《ざっとう》の中で、毎度斬ったの張ったのと、だいぶ物騒であった。
鷹匠町の者で、門前町へ来てなぐられずに帰ったものはない。こっちでも、誰か何か用があって鷹匠町へ行くと
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